『MONO NO AWARE』9冠受賞。
初めて制作側に立って感じたこと

2026年10月 | Georgiana Jette

日本を舞台にしたフィリピン映画『MONO NO AWARE(物の哀れ)』が、2026年のPuregold CinePanalo Film Festivalで、作品賞を含む9つの賞を受賞しました!

今回、私は俳優としての出演に加え、初めて制作スタッフとしても参加しました。

普段とは違う立場から映画づくりに関わることができた、私にとって忘れられない作品です。

『MONO NO AWARE』ってどんな映画?

BC Amparado監督による『MONO NO AWARE』は、日本で暮らすフィリピン人たちの孤独や喪失、そして人とのつながりを描いた映画です。

主人公は、日本で特殊清掃員として働くフィリピン人のイチ(Juan Karlos Labajo)。

孤独死した人々の部屋を清掃する仕事をする中で、妻を亡くして一人で暮らすジョージ(Perry Dizon)と出会い、彼からある願いを託されます。

タイトルの「物の哀れ」は、物事のはかなさや、移り変わっていくものに感じる美しさ、切なさを表す日本の美意識です。

日本人にはなじみのある言葉ですが、その感性をフィリピン人監督の視点から描いているところが、この映画の面白さだと思います。

実はBC監督自身も、日本で働いていた亡き叔父さんから影響を受け、この作品にその思いを込めたと語っています。

そして、もう一つ注目してほしいのが「言葉」。

作中では、日本語、タガログ語、ビサヤ語の3つの言語が自然に使われています。

フィリピンでは、出身地や話す相手によって言語が変わることも珍しくありません。

日本で暮らすフィリピン人たちのリアルな会話や、何気ない文化の違いも、この作品ならではの見どころです。

初めて、カメラの裏側へ

普段は俳優・モデルとして活動していますが、今回初めて、プロダクション側の仕事に本格的に挑戦しました。

担当したのは、プロダクションコーディネーターと通訳。

日本とフィリピンの制作チームの間に入り、撮影がスムーズに進むよう、コミュニケーションをサポートする役割です。

撮影前のミーティングでの通訳から、ロケハン、撮影準備、そして撮影中には助監督からキャストへの指示を伝えるなど、さまざまな場面に携わりました。

日本語、英語、タガログ語を行き来する毎日。

そこで感じたのは、通訳はただ言葉を訳すだけではないということでした。

日本とフィリピンでは、仕事の進め方やコミュニケーションの取り方も異なります。言葉だけでは伝わらないニュアンスもあるので、両方の文化を理解した上で、相手にきちんと意図が伝わるよう心がけました。

日本で育ち、フィリピンの文化にも親しんできた私だからこそ、できることがある。

これまで当たり前だと思っていた自分のバックグラウンドが、こんな形で役に立つとは思っていませんでした。

初めての仕事ばかりで大変なこともありましたが、それ以上に学びの多い現場でした。

カメラの裏側、そして俳優としても

制作側として動きながら、俳優としても出演しています。

主人公イチが訪れる送金センター・フィリピン系コンビニの店員、ローズ(Rose)役を演じました。

裏方として撮影をサポートしながら、自分の出演シーンではカメラの前に立つ。

両方を経験したことで、今まで俳優として参加してきた現場が、少し違って見えるようになりました。

一本の映画が完成するまでに、どれだけ多くの人が関わり、それぞれの仕事を支えているのか。

これから俳優として現場に立つときも、今回の経験を大切にしていきたいと思っています。

ちなみに、ジョージ役のPerry Dizonさんは、日本映画『ドライブ・マイ・カー』にも出演されています。

撮影中、私が出演した『ザ・トラベルナース』の話になり、実はお互い岡田将生さんと共演した経験があると分かって、そんな意外な共通点で盛り上がったのも楽しい思い出です。

違う国、違う作品で活動してきたのに、こんなところでつながるなんて。映画の世界って面白いですね。

そして、映画祭で9冠受賞!

2026年9月30日、Puregold CinePanalo Film Festivalの授賞式で、『MONO NO AWARE』は9つの賞を受賞しました。

作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、国際審査員賞、アンサンブル賞、撮影賞、編集賞、音響賞。

長編部門で最多受賞となり、フィリピンのメディアでも大きく取り上げられました。

実は、私自身にとっても、これが初めて参加した映画祭でした。

そして、初めてステージに上がり、作品の賞を受け取るという経験もできました。

フィリピンでの映画デビューが、まさかこんな特別な形になるなんて。

撮影中は目の前の仕事に必死だったので、こうして作品が評価され、その場に立ち会えたことが本当にうれしかったです。

今回の映画では、自分にできることをすべて出し切ったと思います。

通訳も、撮影のサポートも、出演も。慣れないことばかりでしたが、できることは何でもやろうという気持ちで取り組みました。

そこまで頑張れたのは、映画が好きだから。そして、自分が育った日本とフィリピン、どちらの文化も大切に思っているからです。

もちろん、今回の受賞は、監督、プロデューサー、キャスト、スタッフ、そして日本とフィリピンの両チームが力を合わせた結果です。

そんなチームの一員として参加できたことを、誇りに思います。

最後に

今回の『MONO NO AWARE』は、私にとって俳優としての新たな一歩であり、制作側からも映画づくりを学ぶ貴重な機会になりました。

これまで身につけてきた言語や、育ってきた環境が、誰かと誰かをつなぐ力になる。

それを実際の現場で経験できたことは、9冠という結果と同じくらい、私にとって価値のあるものでした。

フィリピンでの映画デビュー、初めての映画祭、そして制作スタッフとしての挑戦。

この作品を通して出会えた皆さんと、一緒に映画をつくる機会をいただけたことに、一生感謝しています。

いつか日本の皆さんにも『MONO NO AWARE』を観ていただける日が来たら、うれしいです。

Georgiana Jette